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はじめに
- どんな段階であれ、英語学習をしている人
- 第二外国語を学ぼうと思っている人
- 子どもの英語学習について考えている人
- 英語を教える立場の人
どれかに当てはまる人には、きっと一読の価値があるのではないかな、と思いました。この記事では、本の内容や読んだ感想を書いています。
4つの視点から読んでみた
今回ご紹介する『外国語上達法』(千野栄一 著) という本は、次の4つの視点から読めると思いました。
- 英語 (第一外国語) 学習、これまでとこれから
- もしも今から、第二外国語を学ぶとしたら
- 海外在住者として気になる、子どものバイリンガル教育という視点から
- 英語を教える立場としたら
私自身は、最初は、
- 第二外国語学習に興味があったのと
- 子どもの語学教育に関して何か書いてあれば
ということで、読み始めました。が、読み進むにつれ、
- 自分の英語学習について振り返ったり
- これからの学習についても考えて
頭の中を整頓することができました。また、
- とてもよかった英語の先生のこと
- 自分が家庭教師などで教えていた頃のこと
を思い出し、考えさせられることもありました。
というわけで、結果、少なくとも上の4つの視点から読めると言えるんじゃないかな、と思います。
ざっくりこんな本でした
私には信じられないけれど、筆者は、
何度も繰り返すようで恐縮だが、私は本当に語学が不得意なのである
と書かれています。
そんな筆者が、いくつもの語学習得を重ねるうちに、
外国語の習得にはその習得を容易にするコツがあり、まずそのコツを知ることが大切である
と思うようになったそうです。
ざっくり書くと、この本では、それらのコツを教えてくれています。
どんなコツかというと…。
という話をする前に一つ。
コツはとても参考になると思いましたが、上で書いた「3. 生まれながら海外で育つ子どものバイリンガル教育」については、あまり応用できないかもしれません。
なので、その点だけ先に書いておこうと思います。
バイリンガル教育という視点から
バイリンガル教育という視点から読んで、私が一番印象に残ったのは、
二つの言葉を同じようにマスターすると言う狭い意味での「バイリンガル」…
バイリンガルには才能 (実はこれが必要である)の他に、さらに環境が必要になる
これらの言葉でした。
海外に住んでいるからといって、誰もが簡単にバイリンガルになれるわけではないのだろうな。と、漠然と感じていたことが言葉になっているように思いました。
それに、「狭い意味での」バイリンガルという言葉。
それでは、広い意味でのバイリンガルとは…。
バイリンガル教育については、これ以上は本書の内容から外れてしまうので、また機会があったら別記事にしようと思います。
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紹介されていたコツ9つとは
話を戻して、本書で紹介されていた、外国語上達のための「9つのコツ」を、順に紹介します。
1. 目的と目標
目的と目標を考える。やっぱりそこは大事ですよね。
「どんな目的であれば、どの程度で大丈夫でしょう」そんなことも本書には書かれています。
振り返ってみると、私にとって、英語というのはただ「学校で習う教科の一つ」で。苦手意識しかなく、そこには何の目的も目標もありませんでした。
絶対使わないのになんで勉強しないといけないんだ!
と思っていた中学生の私に、使うことになるよ、と教えたいわ…。
などと、過去を振り返っても仕方がなくて。今の時点での、目的・目標を設定することが大切ですね。
そして、第二外国語を学ぶとしたら、その目的と目標は?
漠然と手をつけるのではなく、ちゃんと目的と目標を定めてから学習を始めよう、と思いました。
「目的派」「手段派」そんな話題も、本書の最後のまとめの章に書かれています。
2. 語彙
外国語を学ぶなら、まず1,000の単語を覚えるように。とのことです。学ぶ言語によるみたいなのですが、次は、3,000が目安なのかな。
その数の理由、どんな語彙を選ぶべきか、3,000の次の段階とは、なども書かれていますし、語彙の習得がうまくいかない理由なども納得させられます。
詳細は、本書でご確認ください。
また、語彙に関して、こんなことも書かれていました。
正直にいって特効薬はない
単語を増やそうとする学習者その人の意欲が一番大事
語彙の習得はどの言語でも同じだけ時間がかかり、日本であろうと留学先の外国であろうと、意識して覚えない限りどうにもならない
他には、最初の1,000語を覚えるときに、”辞書を引いて覚えるのはむだ” である。そんなことも書かれています。
これは、第二外国語を学ぶ前に知っておいてよかったと思いました。
ちなみに、日本の学校教育では。文部科学省の、”平成 33 年度 (*注: つまり2021年、令和3年)から全面的に実施” されるという、中学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 外国語編 によると、
小学校で 600 ~ 700 語程度,中学校で 1,600 ~ 1,800 語 程度,高等学校で 1,800 ~ 2,500 語程度」を指導すること
とされているようです。
3. 文法
文法って実はおもしろいんだよ。
確かに、そう思わせてもらえるような例などが書かれていました。
この本のおかげで、日本語の文法についてもちょっと興味が出て、本書でオススメされていた本ではありませんが、違う本を買ってしまいました。
- 『日本語の文法を考える』(大野晋 著・岩波書店)
- 『日本人のための日本語文法入門』(原沢伊都夫 著・講談社)
4. 学習書
- 自習する場合
- 先生に教えてもらう場合
それぞれ、どんな学習書がいいのか。そんなことが書かれていました。
具体的にオススメの参考書が書かれているわけではありませんが、参考になります。
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5. 教師
具体的な内容はここには書きませんが、なかなか、いろんなことが書かれていましたね。
私自身、家庭教師などで英語も見ていたことがありましたが、あれじゃあ申し訳なかったなと反省しました。逆に、いい先生だなぁ、すごく好きだなぁ、と思った先生は「こうだった」んだなと、「何が良かったのか」を言葉で認識しました。
もしもこの先、何かを人に教えることがあったなら、少しでも近付けるものがあったら、と思います。
また、直訳は良くない、というようなことも書かれていました。今は、このブログで書いている『グッドプレイス』の訳を、なるべく直訳するようにしています (英語学習関連の記事は削除しました)。
それは、以前の自分は、どうしてこのような意訳になるのか分からず直訳してあるものが読みたい、と思っていたから。そして、直訳がちゃんと出来てこその意訳かな、とも思っていたので。
だけど、いつか考え直さないといけないかもしれません。
6. 辞書
- 辞書の大切さ
- どんな辞書がいい辞書か
- 自分に合った学習辞典の大切さ
なども書かれています。
ちなみに、辞書の、
編集主幹のはしがき、編集の方針、使い方への指示
を読むことも大事なのだそう。一例として、”OED(オックスフォード英語辞典)の序文”が挙げられており、
この序文はそれ自体が見事な作品
なのだそうです。
ところで、今は、オンラインの辞書がとても便利すぎて、もう長年、本の辞書は開いていません。古い本なので言及されていませんが、ぜひご意見をお伺いしたかったです。
「辞書は多ければ多い方がいい」という公理
ここだけは満たされていると思うのですが、どうでしょうか。
そういえば、辞書の章の最後の方に、”入門の段階を通りすぎた人”が、
辞書を丁寧に引き引き文学作品を読むというのは、高尚な人生の楽しみである。
とも書かれていました。
なんだか違う世界を見せていただいた、と思いました。まだしばらく、AI には追いつけない世界なんじゃないかな、とも思います。
7. 発音
本書の、9章の題名は、
9 発音 ーこればかりは始めが肝心
となっています。
また、『どのように外国語を学ぶべきか』( J・トマン著) より、
外国人は文法上のミスのある文の方を、ひどい発音で話された文よりもむしろ理解できるということをわきまえておく必要がある
という部分を引用されています。
それゆえ。
私は、第二外国語を始めるときには、英語の反省を生かして、絶対に発音の確認からしようと心に固く誓っています。大げさに言ってみましたけど、結構本心です。
本書には、発音に関する話題もいろいろ書かれて、どれも、興味深かったです。
私イチオシの発音の本『[新装版]脱・日本語なまりー英語(+α)実践音声学』(神山孝夫 著) と通じるものがあるようにも感じました。
8. 会話
会話の章では、はじめの方に、こんなことが書かれています。
外国の人と流暢に会話をかわしている人をみて、自分もああいう風に話せたらなと願うのは自然な感情であろう。筆者自身もそう願ってむなしい努力をした人間なので、その気持はよく理解できる。
そして最後は、”会話の生命はその内容である”、そんな話で終わります。
ここまで来るともう『外国語上達法』の問題ではなく、教養の問題であり、知性の問題である。
そうなんですよね。
ここに至るまでの、イントネーション、暗記のこと、黙らない、会話集などの内容は、ぜひ本書でご確認ください。
9. レアリア
以前、なんとなしに受けたTOEICで、
- リスニング満点 (話すスピードが以前の記憶より遅くてびっくりした)
- 文法や語法 (ずっと学習しなさすぎた) 以外はだいたい合っていた (以前より時間が余りすぎてびっくりした)
- 合計950点だった(たまたまという可能性も)
そんな過去があり、そして、今はあの頃より少しはできるようになっているような気もするのですが、英語に関して、今も全く、自信も実力もありません。
もう少しできるようになると思えるには、発音はじめ、課題はたくさんありますが、この「レアリア」も大きな問題だと実感していて。
*本書には、”英語でレアリアを life and thought と訳す” と書かれています。
文化や歴史、背景などについて、少しずつでも分かるようになりたい。それも理由の一つで、海外ドラマ『グッドプレイス』で英語学習を始めました。
そんな記事を以前書きましたが、その方向性は間違っていなかったと思っていいのかな。勝手に、そんなふうに思わせてもらいました。
そして、自分の英語が、ようやくその段階まで来ているということなのかもしれない、とほんの少しだけ感慨深い気持ちにもなりました。
本書のまとめより
『外国語上達法』という本のご紹介の最後に、本書のまとめから、ほんの一部を抜粋します。
よく考えられて集められた例文や語彙をゆっくりと規則正しく覚えていくのが一番正しい学習法である。
規則正しく繰り返すこと、できれば毎日学習するというのは、すべての著者が例外なしに勧めている方法である。
「外国語の習得に際しては、ささやかなあまり大きくない目標をたて、それを遂行していく方がよいであろう」( J・トマン)
外国語を学びたいものは、順番に段階立てて学ばねばならない。まず理解するようにし、ついで書けるようにして、それからやっと話すことを学ぶ方がいい (コメンスキー)
私の願いというのは、「この本に書かれていたことを実際に利用して、外国語ができるようになった」という風になって欲しいということである。
読書を再開した子育て主婦の、読んだ本の記録|2023年前半 でも書きましたが、1986年に発売された本とは思えなくて、語学習得に関する本質が色褪せていないことにびっくりしています。
著者は2002年に亡くなられているようですし、もちろんお会いしたこともないですが、本書を通して、著者の思いや言葉がダイレクトに伝わってきました。
とても好きな本でした。
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私のまとめ
コツとは言っても、なんだ、普通のことじゃないか。もしかして、そう思われた方もいるかもしれません。それは多分、こんなことが書かれていた、と私が表面をさらっと書いただけだからかな、と思います。
実際、私は本書を読んでハイライトをたくさんつけましたが、ほんのほんの一部しか、こちらの記事に引用していません。短い記事にしたかったのに、こんなに長くなってしまって、それでも書かれていたことは全然伝えきれないなぁと。
というわけで、語学習得に興味のある方は、ぜひ『外国語上達法』(千野栄一 著)を一読されることをオススメします。
響く言葉がきっとたくさんあることと思います。
そういえば、この記事を書くにあたり、パラパラ読み返しながら、「もしかすると、以前の私なら、この本の良さは分からなかったかも」と思ったのでした。
例えば、「受験に必要な一科目」としてしか見ていなかった頃。
TOIEC の点数が上がれば、英語ができるようになるのだろうと思っていた、社会人時代。
- 大したゴール設定もなく
- どこに向かっているかも分からず
- 道のりを分かろうともせず
- ただただ目の前のことだけをしている
そんなあの頃の私は、この本を読んでも、「語学学習の全体を見据えて、ちゃんと’マスター’した人の視点から書かれたすごい良書だ」ときっと分からなかっただろうな。
だから、レアリアの必要性に気付けるほどまで伸びもしなかった、のかもしれません。
「語学ができるようになる」とはどういうことなのか、多分それが分かっていなかったから。
以前の私に、本書の良さを教えたいし、理解してもらいたいな。それが、語学習得に向けて、きっと近道になると思います。
最後に。
私はこの本を読んで、英語も第二外国語も、「こんなふうに進めていこう」と自分のなかで方向性を決めることが出来ました。
また、「語学」そのものに興味が持てるようになった本でもありました。
外国語の習得は、
少しずつでも毎日する方がいいことは明らかである。
たくさんの言語をものにされた著者の言葉は、とても説得力があり、励まされます。結果を出せるように、少しずつがんばりたいと思います。
それにしても、語学どころか英語にも全く興味がなかったはずの私が、今頃になってこんな本を読んでいるのだから、人生は何が起こるか分からないものです。
*今回読んだ本*
*2023.02 に読みました
*他には、こんな本を読んでいます*